連載エッセイ「日々の徒然」

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◎第5回(2000/9/30)

荒い鼻息

高橋 香緒里
今から○年前、入社まもない頃の話です。
ある日の昼過ぎ、電話のベルが鳴りました。私は即座に受話器を取りました。

「はい、○○○○社で御座います」
「・・・・。(ぜいはあ。ぜいはあ。)」

相手は沈黙したまま。荒い鼻息だけが聞こえてきます。

これは、イタ電かっ?
私はひそかに色めき立ちました。これが自宅であったなら、このようなヘンタイ野郎には罵声のひとつも浴びせてやるところですが、なにせ会社なので穏便にすませねばなりません。私はとりあえず聞いてみました。

「もしもし?どちらさまですか?」
「・・・・。(ぜいはあ。ぜいはあ。)」

相手はあいかわらず答えません。むげに切っていいものかどうか迷ったので、しばらくそのまま受話器を耳に当てていたところ、荒い鼻息はますます激しくなり、それどころか、ガサゴソいう音や、べちゃべちゃというような謎めいた音まで・・・!

うわー、やばいよー・・・

さすがの私もそのまま切ろうとした、その時。受話器の向こうから声がしたのです!

「あっ!ハッピー!ダメじゃないのイタズラしちゃ!」
「クゥ〜ン。(がちゃ!ツーツーツー・・・)」

・・・それは犬からの電話だったのでした。

ハッピー君。受話器を舐めてはいけません。


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